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『バズー!魔法世界を詠む』 これまでのあらすじ
『テオの日記』 - 001

2015/01/04 SUN

僕の名前はテオドール。
魔術の国ラルファンにある、ラルファス村が誇る美少年だ。
この日はニレの木の下で、幼馴染みのマリアと一緒に、吟遊詩人フェールが詠う帝国崩壊の物語を聞いていた。
まあまあ男前なこの旅人は、この時期になるとよく村に立ち寄ってくれる。

この僕も今日で十六歳。
美しさもますます増して、そろそろ農夫には収まりきらなくなってきた。
クレア母さんが美人なのも、家で入念にお祝いパーティの準備をしていてくれたのも、僕の顔立ちを見れば当然の事だ。

けれど食事中に、ナッシュという美しくないおじさんが訪ねてきて、驚きの事実を告げた。
僕の亡き父があの高名な魔道士リカルドだった事、そしてその父さんは僕に魔道士になって欲しかった事だ。
母さんは父さんを探索中に亡くしたせいで、僕にその事実を伝えないでいたらしい。
まあ、僕の可愛さを考えれば仕方ない。
だけど僕は小さな頃から魔道士に憧れていたんだ。
聞けばお爺ちゃんはハイブレスの領主をやっている伯爵らしいし、こんなしけた村で暮らす理由はもはやない。
可哀想な母さんを慰めて、絶対迎えに来ると言い残し、僕はハイブレスに旅立つ事にした。
そこでお爺ちゃんから許可証をもらって、セラスの魔法学校に入るのだ。

敵が強すぎて全滅。
おまけに村の近くでちまちま三日くらい鍛えてたら、母さんがもう家に泊めてくれなくなった。
だから自分で稼いだ金で薬草を買ってむしゃむしゃ食べた。
世の中は結構厳しい。
一緒に行く事になったフェールも、もう少し気張って僕を守って欲しい。

麦も育たないくらい北にあるハイブレスは、騎士の時代には戦の最前線となった土地で、今は毛皮の交易で栄えている。
冬になると閉ざされてしまうようなこのくそ寒い大地で、城門が開く朝まで待つと、フェールは早々にグリフォンの宿屋という安宿に行ってしまった。
貧乏旅行に慣れている彼にはちょうどいいのだろう。

ブレス伯爵は厳しい人で、簡単には許可証をくれなかった。
剣もろくに扱えないし礼儀作法もなってないから、探索者としても、ブレス家の代表としてもセラスへは送れないと言う。
きっと可愛い僕を近くに置きたくてわがままを言っているのだ。
使用人部屋に寝泊まりさせて使用人の真似事をさせるのは、歪みまくった愛情だけど、城の人は皆テオドール様と呼んで気を遣ってくれるから特別に許す事にした。

従兄弟で見習い騎士のロマールは、町中の女の子に人気だ。
ここの娘達のセンスはよく分からない。
ロマールは年上で、僕に剣を教えてくれた。
彼は踊ってるみたいな格好悪い流派だったから、あまり影響されないように頑張った。
そうして、三ヶ月が瞬く間に過ぎた。
フェールは相変わらず歌集めにいそしんでいたけど、ダルネリアがデュエルファン王国に占領されたり、世界は動いているらしかった。

ガゼラの塔からブレス家の印を持ってくれば、お爺ちゃんが許可をくれるらしい。
そう聞いて行ったら、道中の雨の森で怪しい二人組に出会った。
パル教の司祭ロットと、ジプシーのミマス。
彼らは僕達をロマールの騎士と見込んで、ガゼラの塔にアジトを張る奴隷組織から人々を助ける手伝いをして欲しいと言った。
通りがかりの相手に何を頼んでるんだこいつら、と思っていたらロマールが許可してた。
ちょっとひいた。

そうして僕達は四人で地下道に入った。
だが僕は、「ミマスはぼそぼそとしか喋らないけど、可愛いなあ」なんて考えている間に、ごっつい骨に殴られて気絶していた。
それで仕方ないからハイブレスに帰ると、また城門で待たされたらしい。
こっちは伯爵の孫二人だぞ。
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