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『ポンコツロマン大活劇バンピートロットを詠む』 これまでのあらすじ

『キニス・プルウィア』 - 008

「ねえ、折角だから色んな所を回っていかない? ちょっと遠回りにはなると思うけど、駄目かな……?」

コニーが助手席でそう言った時、キニスは曖昧に笑った。
ふと、ヒバリ田園地帯で出会ったアロアを思い出したのだ。
農家に生まれた娘は、何をしたいのかも分からないまま、焦るように都会に憧れていた。
キニスもまた、自分が何をしたいのかよく分からなかった。
ただ彼女とは違い、彼はどこかのんびりしていた。

川のせせらぎを聞きながら、あの日からずっと一緒にいる古いビークルに眼を向けると、その青いヒト型はいつの間にか随分大きく頑丈な見た目になっていた。
イワツバメの滝裏から出た巨大な発掘品を背負う姿は、どうにも無骨だ。

気にくわない訳じゃあないけれど、もう少し格好良いやつに乗りたいなと彼は思った。
例えばハッピーガーランドの闘技場で見た、スドウという異国人が操っていたもののような。
そんな風に想像していると、出し抜けに自分が闘技場で戦った数少ない試合が思い出されて、もう一度本気で挑戦してみたくなった。

ネフロネフロへ向かう道すがら、まだ砂漠を越え、荒野を行き、広大な世界を横切らなければならない。
やれる事だって、幾らでも広がっていた。
まずは以前立ち寄った孤児院の子供達に、たくさんの食べ物や本を届けてやろうと、キニスは蜂蜜や鶏肉、そして世界名作全集を荷物に積んで、ビークルに乗り込んだ。
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