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『wizardryで物語る』 Appendix Story
彼らに纏わる話 014

「人は自らが望むものに己を成す」
オクサナはそう言うと振り向いて、手を擦り合わせました。
「つまりお前がこの迷宮に居るのはお前が望んだからだし、ここから出られないのも、お前がそれを望んでいるからなのじゃ。……考えてみろ。考えたか?」
男は憮然として、躊躇いがちに首を縦に振ります。
「いいや、考えておらん! 偉そうな顔をしている奴は、決して考えない」
大袈裟な動作で憤慨した後、彼女はにんまりと笑い始めました。
「何を悩んどる? 考えてみろ。何を悩んでおる? ……ああ! いや答えんでいい! 大切なのは、お前は悩みたいから悩んでいるという事じゃ。生きるだけなら、簡単じゃろ? 食って糞して寝ればいい。……じゃが、いられない。望まずにはいられない。さあさあ、ウチに言ってみろ。望みを叶えてやれるかも知れんからの」
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