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『wizardryで物語る』 Appendix Story
彼らに纏わる話 003

金や名誉や栄光を求め、決して出られない迷宮に踏み入り、ひたすらに地下を目指す。
一階の路地を歩き、角を曲がれば、そんな口数少ない冒険者達を目にするでしょう。
彼らは決まって、互いに油断せず、すれ違った後も必死に背中で気配を辿ろうします。
しかし、もしも耐えきれなくなって振り向けば、そこには大抵誰もいなかったり、或いは自分にそっくりな誰かを見る事になるのです。

ここでは飢えや渇きは心配ありません。
飯屋へ行くと水は飲み放題ですし、頼めばすぐに食べられる何かが出てきます。
どれもこれも不味く、酷い臭いなのですが、仕入れが滞る事はないようです。
味のない料理を口に含みながら、その言葉の意味も分からずに呟く者がいました。

「まるで死人が食うものみたいだ」
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