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『wizardryで物語る』 Appendix Story
彼らに纏わる話 007

あの懐かしいラフネックの酒場で、ジンは酒を飲みながら別の冒険者と話していました。

「ハルシュタインはろくな奴じゃなかったが、この街の冒険者にとっては保護者みたいなものだった。奴が逃亡した事で、軍備のための冒険者増産って考えは死に体さ」
「奴さん、政治屋に敵が多かったみたいだしな。それに国内の厄介な迷宮問題は、もうお前らが解決しちまった。片付けたくもなるか」
「ハルシュタインだけじゃない。まともな街は冒険者なんてありがたがらないぜ。……聞いたか? テッドの迷宮に入った奴らが帰ってこないって」
「馬鹿な。それが本当なら、もっとでかい問題に……」
「俺が昔いたところでは、毎日のようにこんな広告が聞こえてきた。記憶程便利なものはない。誰もが自分の思い描いたとおりに物事を覚えていっている。嫌いなヒトならより悪い者に、好きなヒトならより都合のいい者に……。お前、本当に連中の事を覚えてるか? 蓋をしちまえば、後は残った側の思い通りさ」
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