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『wizardryで物語る』 Appendix Story
彼らに纏わる話 009

一体どこから手に入れてくるのか、サリアンナはこの抜けられぬ迷宮の中でも、いつも本を読んでいます。
この監獄に本など必要であるはずがないのですが、どうやら手に入れる術はあるようです。
半ば寝ているような、半ば睨んでいるような、そんなジトッとした眼で彼女は文字列を追い続けます。

「何を読んどる?」
退屈そうに寝床に座っていたゾフルが尋ねると、彼女は二、三秒観察するような視線を向け、口を開きました。
「輪廻転生」
「うん?」
「……死んだら、生まれ変わる。人間がよく口にするけれど、元々は一部のホビットが持っていた価値観なの。だから本当はホビットの書いたものを読みたい。そんなものはないけれど」
「戦士が剣に命令する。剣は戦士に命令出来ない。死後の事を考えるなぞ時間の無駄だ」
「彼らが元々語っていたのは死後の事ではないの……。巨大な視点を超える、周期性という超巨大な視点によって、偶然への解釈を変えた」
「つまり運かあ! だが運を掴むのは先に覚悟を持った者だ。頭良くやろうとする奴程、貧乏くじを引くのだからな」
「偶然や小さな揺らぎは……」

彼らの話し声は延々と聞こえましたが、周囲の連中はすぐに聞き耳を立てるのを止めてしまいました。
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