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『wizardryで物語る』 Appendix Story
彼らに纏わる話 010

角を曲がると出会う強力な魔物も、街の施設で擦れ違う冒険者も、暗い小部屋に住居を見つけた迷宮の住人も、ここでは何ら差異のない存在です。
二本足で立っているから、知恵があるから、毛むくじゃらじゃあないから。
理屈をいくら並べ立てたところで、扉を一つ開ければ論理など霧散してしまうのです。

その部屋には、アコライトらしい老いた男が数人と、据わった眼をした若いシプシーの女がひしめき合っていました。
彼らは怪しげな宝珠と汚らしい泥のようなものをいじりながら、嬌声や悲鳴を上げ合っていましたが、扉からの侵入者に気付いた途端、強い敵意を露わにしました。
通路からそれを覗いたサリアンナは、無言のまま小さく震えます。
それからこう思うのです。
「ああ、これでまたたくさんの魔法が試せる」
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