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『wizardryで物語る』 Appendix Story
彼らに纏わる話 016

「追い剥ぎってのは頭に来るわね。人の都合なんてお構いなしだから」
カヤは顔を振って、後ろでまとめていた長いブルネットの髪を頬から振り払いました。
そして両手を腰に当てて、ふうと息を吐き出します。
よく見ると鎖骨の辺りにはじっとりと汗が浮かんでおり、さすがの彼女も疲れている事が分かるでしょう。

それを認めたゾフルは、担いできた三つの死体を一カ所に運び、キャンプを開きました。
普段口数が多いこの老人も、今はどっかと座り込んで、押し黙ったままでいます。
が、その逞しい灰色の眉から覗く目元と、虎髭に囲まれた口元には常に笑みが張り付いていて、彼はオクサナの遺したレイスに囲まれながら、この死地を楽しんでいるように見えました。

「全くもう。どうしてこんなのばっかりと組んじゃったかなあ」
カヤは嘆くように唇の間で呟いて、アイリーンの死体の側で気を緩めないでいるサイードに目を向けると、柔らかく肩をすくめました。

「何をしている?」
しばらくしてから、そのサイードが長身を音もなく操り近寄ってきて、尋ねました。
彼の長い首筋からは、はっきりとした低い声が響きます。
「貴重な魔力だろう?」
「通路に目印を付けてるの。死んでしまったら、その場所が分からないと困るでしょ?」
彼は、カヤのような女性が自らの死について平然と解説するのを、意外に思いました。
すると彼女は、何も返答しないでいるサイードの方を少しだけ見やった後、作業を続けながら言うのです。
「死ぬ覚悟なんて簡単よ。腹に力を入れるだけ」

そして、強い眼差しが彼を捉えました。
「だけど死んだってまだ、私達の日常は続く訳。下手をしたらね。へまをやったって、むしろあんたの刀は鋭さを増してるみたいじゃない。それ、何か別の事にでも使うつもり……? まっ、そうじゃないんなら、あんたにだってやれる事がたくさんあるんじゃない?」
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