彼らに纏わる話 017
「んむっ!?」
美しい白金色の長髪と、輝くブロンドヘアが、滑らかに混じり合いました。
ドレインは個人の経験を略奪し、一時的な記憶の混濁を引き起こします。
そのせいか、その時のアイリーンには普段の冷徹さはなく、バタバタと両手を振り回して必死にブロンディを引き剥がそうとしていました。
しかも急いで助けに来たサイードに対しても、愚図!役立たず!と少女のように罵りながら、しばらくバシバシと叩き続けた始末です。
心なしか目元には涙みたいなものが光っていた気がします。
「ここはニンジャヤシキのようです」
サイードが言いました。
住人は先程の全裸の美女達、そしてたった今、扉を開けた途端に天井から降ってきたマスターニンジャです。
腹いせに部屋を血で染め上げたアイリーンは、刀を拭う事もせずに、まだ不機嫌そうに唇をごしごし拭いています。
その苛立ちが周囲を圧倒して、誰も彼女に話しかけられないでいる時でした。
サリアンナがてくてくと部屋の隅に歩いて行ったかと思うと、キラキラ輝く宝石を拾って戻ってきました。
そして彼女はそれをアイリーンの掌に置き、ぎゅっと手を握ります。
「さ、さっき……、ちょっと、可愛かった」
サリアンナは、ひくひくと不器用そうに笑みを浮かべていました。
カヤは影で笑いを堪えています。
サイードは困ったように二人を見比べています。
オクサナは離れた所で興味を持った肉片をつついていて、ゾフルは神経質そうに武器を手入れしています。
どうやら、元々サリアンナの病的なマッピングを見て背筋に悪寒が走っていたアイリーンは、また一つ彼女の事が苦手になったようです。