彼らに纏わる話 002
テッドの迷宮一階にある暗い一室で、カヤはがばと目を覚ましました。
彼女はしばらく中空を見つめた後、どうにかして持ち込んだ酒瓶からやっと手を離します。
そして隣でちょこんと座りながら本を読むサリアンナに、話しかけました。
「あれ、あたし宿に帰ったっけ?」
「ううん。この迷宮は一度入ったら出られないから、宿には帰ってない」
「ちょっと! 出られないってどういう事!?」
「……それ昨日も話した」
「あたし、もう少ししたら旦那の顔を見に帰る予定だったんだけど!」
「……それ昨日も言ってた」
「ったく! 何にしてもハルシュタインの野郎を探すしかないって訳ね。まあ、あいつの逃げ道もないんだから、手間は省けるか!」
「……それも。それとカヤ、昨日アイリーンが怒りながら、しばらくお酒は禁止しなきゃいけないかもって」
「うっそ!」